出船(でふね) の精神
きものの柄のひとつ、「宝船」は、
船首の向きで、出船(でふね)、入船(いりふね)と
呼び分けるというお話しをしました。
柄の呼び名だけではなく、実際に
船首を港(陸側)に向けて停泊することを入船、
船首を海側に向けて停泊することを出船と言います。
客船では船首を港に向けてそのまま入港すれば
お客さまは早く下船できます。
ですが、
出港するには一旦バックして進み
港内で進行方向を変える必要がありますね。
緊急時にはそれは大変なタイムロスとなります。
旧日本海軍から続く伝統に
「出船の精神」と呼ばれものがあり
いつ何時においても迅速に行動に移せるよう
常に準備をおこたってはならないという
心構えを言います。
手間がかかっても次の行動の為に一旦向きを変え、
すぐに出港できる「出船」の状態で係留しておく。
船に限らず、
日々の行動にも「出船の精神」は
当てはまりますね。
例えば玄関先でも出船・入船が。
玄関で履物を脱ぐとき
履物は入船の状態です。
このまま上がり
迎えてくれた方に背やお尻を向けないように
注意してひざまづき履物を出船に直します。
草履、靴、男女問わず、
玄関先の履物は「出船」に揃え、
スムーズに履けるよう整えておくのがマナーです。
※写真では玄関の真ん中になっていますが
玄関の中心を避けて上がり履物は隅に寄せます。
旅館や料亭など、
履物を預かってくださる下足番の方が
いらっしゃるときには「入船」のままで上がり
自分で直さず係の方におまかせします。
出船の精神を心の片隅に、
先の事を見越した振る舞いをしたいなと思います。
宝船、結局どちらを向いている??
きものの模様のひとつ、「宝船(たからぶね)」について
お話ししました。
「宝船模様」の色留袖の写真とともに
舳先の向きが
左向きは「入船」
右向きなら「出船」と呼び分けられるとお伝えしました。
この色留袖をご覧になった方から、
「あれ…、これはどっち向き…ですか?」とのお言葉。
確かに帆も、波も、風も方向がさまざまに見えます。
図案としてはとても気持ちよくまとまっていますが
一瞬どちら?と思われるかもしれません。
そんな時は
宝船に寄り添う瑞鳥を探してください。
瑞鳥(ずいちょう)とはおめでたいことがおきる
前兆として現れる鳥のこと。
宝船の航海に幸いあれと
海行く船の進行方向の舳先にはこの瑞鳥が現れて
先導してくれると言われています。
ですから、
ご紹介した色留袖は左向き、「入船」という訳です。
ちなみに「出船」は…?
瑞鳥が右側に舞っていますね。
意気揚々港を出て進む宝船の舳先にもやはり
瑞鳥が寄り添っています。
宝船がどちらを向いているか、
もし宝船の柄を見かけたら
ぜひ確かめてみて下さい。
※写真の色留袖はsold outとなりました。
※袋帯は帯屋捨松製
名匠庵にてご覧いただけます。
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謹賀新年
古代ちりめん「壬寅みずのえとら」羽子板
年頭に際し
皆様のご健康と
なお一層のご繁栄を心よりお祈り申し上げます
本年も相変わらずご愛顧のほど
よろしくお願い申し上げます
株式会社名匠庵
代表取締役 大塚明則
ちりめん羽子板:
愛知県豊橋市「カフェフュージョン」で
開催されたワークショップにて
ちりめん戯縫(ざれしごと)を主宰する
森島民恵先生にご指導(ほぼほぼ手伝って)いただき
女将が手作りいたしました。
良い一年になりますように